コンプの種類と違い:OPTO・FET・VCA の特徴と、素材別の選び方
コンプレッサーのタイプは、どれも同じ仕事をします。入力が Threshold を超えたら、超えた分を Ratio に従って圧縮します。違うのは、音量を下げる部品の動き方です。
その動き方の違いで、圧縮の入り方と戻り方が変わります。同じ Attack 10ms、Release 100ms に合わせても、タイプが違えば同じ音にはなりません。
OPTO(光学式)
OPTO は、光る素子と、光の強さで抵抗値が変わる素子を組み合わせて音量を下げます。素子が光の変化に反応するまで時間がかかるので、動きはゆるやかです。
圧縮が穏やかに入るため、トランジェントが残りやすくなります。戻りは音の強さで変わり、強く圧縮した直後ほどゆっくり戻ります。かかっているのに気づきにくい、自然な均し方です。歌の強弱を整えたいボーカルや、サスティンのあるベース、アコギ、ストリングスやパッドに合います。
反応が遅いので、速いピークを確実に止める用途には向きません。リズムの細かい素材では、次の音までに圧縮が戻りきらないことがあります。そうなると、音が引っ込んだまま聴こえます。
FET(トランジスタ式)
FET は、電界効果トランジスタを可変の抵抗として使います。反応がとても速く、短い Attack でもきちんと効きます。
ピークを素早く捕まえ、強めにかけると前に出てくる音になります。倍音も少し加わります。前に出したいボーカル、スネアやキック、パンチのあるベース、ドラムバスによく使われます。
速い Attack でトランジェントを抑えすぎると、立ち上がりのパンチが消えます。勢いがある状態と潰れた状態の差は小さいので、音量を揃えてバイパスと聴き比べるようにしてください。
VCA(電圧制御式)
VCA は、電圧で増幅率を変える回路(Voltage Controlled Amplifier)で音量を下げます。Threshold や Attack などの設定値どおりに動くので、結果を予測しやすいタイプです。
色付きが少なく、素材の音をあまり変えません。色を付けたいときは、後段にサチュレーションを足します。高い Ratio でピークをしっかり抑える使い方も、低い Ratio でバスを軽くまとめる使い方もできます。ステレオバスや、ダイナミクスを正確に整えたいボーカルやベースに向いています。
3 タイプの早見表
| 項目 | OPTO | FET | VCA |
|---|---|---|---|
| 反応の速さ | ゆるやか | とても速い | 設定どおり(幅広い) |
| 音の印象 | 滑らか・自然 | 勢い・密度 | 素直・正確 |
| 色付き | 穏やか | やや強め | 少ない |
| 得意な素材 | ボーカル、アコギ、サスティンのあるベース | ドラム、パンチのあるボーカルやベース | バス、正確に整えたい素材全般 |
素材別の選び方
下の数値は出発点です。ゲインリダクション(GR)メーターを見ながら、実際にどれだけ圧縮されているかで合わせます。
- ボーカルには OPTO か FET。GR は歌のピークで 3〜6dB ほど。滑らかにしたいなら OPTO と遅めの Attack、前に出したいなら FET にします。
- ベースの低域を安定させるなら OPTO か VCA、パンチを足すなら FET。GR は 3〜6dB ほどから始め、Attack を遅くするとパンチが残ります。手順は ベースのコンプ設定は難しい?初心者が迷う理由と、すぐ使える簡単セッティング術 にまとめています。
- 単体のドラムには FET がよく使われます。Attack を遅めにするとアタック感が残り、速くすると音が詰まって密度が上がります。
- ドラムバスやステレオバスは、VCA で GR 1〜3dB ほど軽くかけます。ポンピングが出ていないか確かめてください。
- アコギは OPTO で軽めにかけると、ストロークの強弱が自然に揃います。
アタックとリリースの効き方
Attack と Release の意味はどのタイプでも同じですが、効き方は違います。OPTO はもともと動きが遅いので、同じ数値でもゆるく効きます。FET は速いので、同じ数値でも鋭く効きます。
タイプを変えたら、前の数値をそのまま使わずに合わせ直します。GR メーターを見て、耳でも確かめてください。
コンプの後段のサチュレーション
コンプの主な役割は音量を整えることです。圧縮したあとに物足りなければ、後段にサチュレーションを置いて倍音を足す手があります。前段に置くと、サチュレーションで増えたピークにもコンプが反応するので、かかり方が変わります。
- TUBE(真空管系)は偶数次の倍音で、温かく丸い厚みが出ます。ボーカルやアコギに。
- XFMR(トランス系)は低域に厚みが出ます。ベースやバスに。
- TAPE(テープ系)は高域がやわらぎ、全体がなじみます。バスやドラムに(詳しくは サチュレーションとテープの基礎知識:倍音の仕組みとテープ特有の質感)。
- FET(トランジスタ系)はエッジのある押し出しになります。ドラムやギターに。
かけすぎると音が濁るので、ちょうどいいと感じる少し手前で止めます。サチュレーションは音量も上げるので、ここでも音量を揃えて聴き比べてください。
タイプ選びを素材に任せる:AC-1 Adaptive Compressor
AIDE AUDIO の AC-1 Adaptive Compressor は、OPTO・FET・VCA の 3 タイプを持つコンプレッサーです。LEARN 機能が、タイプと各パラメーターの初期値を素材から決めます。
AC-1 の使い方
- SOURCE を選ぶ: 素材の種類を選びます。迷ったら Universal で構いません。
- LEARN を押して 8 秒再生する: 音が鳴っている部分が合計 8 秒になるまで、実際の素材を再生します。無音や小さすぎる音は測定に含まれません。
- 値が決まる: 測った値から、圧縮タイプ(OPTO / FET / VCA)と THRESHOLD・RATIO・ATTACK・RELEASE・KNEE などが決まります。
LEARN は一度決めた値を保ち、再生中に追いかけ続けることはしません。決まった値は出発点なので、あとから手で直せます。
LEARN のあとに TARGET で、欲しい GR を指定できます。GR リングのマーカーを 1〜20dB の範囲で動かすと、RATIO・KNEE・THRESHOLD が変わります。「3dB ほどかけたい」と決まっているなら、ノブを 1 つずつ回さずに済みます。
コンプの後段には DRIVE があり、TUBE・XFMR・TAPE・FET の 4 種類からサチュレーションを選べます。LEARN は DRIVE をオンにしないので、必要なら自分でオンにします。
価格は買い切りで、今は発売記念価格の $14.99(通常 $29.99)です。1 つのシリアルで、既定では 3 台まで使えます。試用版では 7 日間、全機能を試せます。